MiniMax H3は、テキストや画像から動画を作るだけでなく、映像と音声を一緒に生成できる動画生成AIです。 画像、動画、音声を参考資料として渡し、「この人物に、別の動画の動きをさせ、指定した声で話してもらう」といった指示にも対応します。
2026年7月31日に公開され、最大15秒、2K解像度、ステレオ音声付きの動画を生成できるモデルとして注目を集めています。 モデルの中核部分がオープンウェイトで公開され、APIだけでなくComfyUIを使ったローカル実行にも対応しました。
一方で、公式サービスとローカル版には機能差があります。 「2K対応」や「オープンウェイト」という表現も、内容を分けて理解する必要があります。
この記事では、2026年8月8日時点の公式発表、モデルカード、APIドキュメント、ライセンス原文をもとに、MiniMax H3でできることと利用時の注意点を整理します。
MiniMax H3とは
MiniMax H3は、中国の上海を拠点とするAI企業MiniMaxが開発した動画生成モデルです。 チャットやプログラミングに使う同社の言語モデル「MiniMax M3」とは別の製品です。
MiniMaxはH3を、複数の種類の情報をまとめて扱うオムニモーダル生成モデルと説明しています。 ここでいうオムニモーダルとは、テキスト、画像、動画、音声を一つの文脈として理解し、その関係を反映した動画を生成する仕組みです。
公式モデルカードに記載された主な出力仕様は次のとおりです。
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 動画の長さ | 4〜15秒 |
| フレームレート | 24fps |
| 基本解像度 | 短辺768ピクセル |
| 最大解像度 | H3-Regenerate-2Kを利用した2K出力 |
| 音声 | 32kHzステレオ |
| アスペクト比 | 21:9、16:9、4:3、1:1、3:4、9:16など |
| 会話言語 | 日本語を含む11言語を安定してサポート |
公式仕様では、生成動画内の会話について、日本語が安定対応する11言語に含まれています。 ただし、この記載が保証しているのは動画内の会話言語です。 日本語で書いた任意のプロンプトが、英語と常に同じ精度で解釈されるという仕様までは示していません。
MiniMax H3でできること
MiniMax H3には、大きく分けて3つの生成方法があります。
- テキストから動画を作る:場面、登場人物、動き、カメラワーク、会話、効果音、音楽を文章で指定します。
- 画像から動画を作る:1枚の画像を最初または最後のフレームとして指定したり、2枚の画像の間を動画にしたりできます。
- 参考素材から動画を作る:画像の人物、動画の動きやカメラワーク、音声の声色などを組み合わせて指定します。
参考素材を使うRef2VAモードでは、画像を最大9枚、動画を最大3本、音声を最大3本まで入力できます。 すべてを合わせたファイル数の上限は12です。 音声だけを単独で入力することはできず、画像または動画と組み合わせる必要があります。 参考動画と参考音声は1本あたり2〜15秒で、それぞれの合計時間も15秒以内です。
公式のAPI仕様では、最初や最後のフレームを指定する画像入力と、Ref2VAの参考画像、参考動画、参考音声を同じリクエストに混在させることはできません。 リクエスト全体の上限も64MBなので、大きな素材はBase64で埋め込まず、公開URLで渡すことが推奨されています。
たとえば、人物の画像、ダンス動画、声のサンプルを渡し、「画像の人物にダンス動画の動きをさせ、音声サンプルを参考に話してもらう」と指示できます。
どの素材を何に使うかは、<Picture 1>、<Video 1>、<Audio 1>のようなタグと文章で指定します。
H3は映像を作った後で別の音声生成モデルを重ねる方式ではありません。 公開されているアーキテクチャ説明では、H3-Omni-Transformerが映像と音声の潜在表現を同時に予測し、一つのMP4として出力すると説明されています。 会話、環境音、効果音、音楽を映像と合わせて生成できる点が、H3の分かりやすい特徴です。
MiniMax H3が注目されている理由
これまでの動画生成では、人物の固定、動きの参照、音声生成、動画編集などに別々のモデルや機能を使うことが一般的でした。 H3は、それらを自然言語と複数の参考素材から扱える一つのモデルへまとめようとしています。
もう一つの理由は、モデルの中核となるH3-Baseの重みが公開されたことです。 クラウドサービスだけでなく、対応するコンピューターがあればローカル環境でも生成できます。 ComfyUIはH3を正式にサポートしており、テキストから動画、画像から動画、参考素材から動画を作る3種類の公式ワークフローを提供しています。
ただし、現時点でH3が他社の動画生成モデルより優れていると断定できる比較データはありません。 MiniMaxは、指示への追従、文字やブランド情報の表示、動画から動画への動作転写などを強みとして挙げていますが、これは先行利用者の反応を含むMiniMax自身の発表です。
2026年8月8日時点では、他社モデルと同じ条件で比較した品質ベンチマークが公式モデルカードに掲載されておらず、詳細な技術レポートも今後公開するとされています。 Sora、Veo、Seedance、Klingなどとの優劣は、独立した評価が揃ってから判断する必要があります。
MiniMax H3を利用する3つの方法
MiniMax H3を試す方法は、Webアプリ、API、ローカル実行の3つです。
- Hailuo AIを利用する:専門的な環境構築をせずに試したい場合は、MiniMaxのH3用Webアプリを利用します。
- MiniMax APIを利用する:自社サービスや制作ツールへ組み込む場合は、MiniMaxのAPIから生成タスクを送信します。
- ComfyUIでローカル実行する:モデルをダウンロードし、ComfyUI 0.30.0以降の公式ワークフローを利用します。
初めて動画生成AIに触れる場合は、Hailuo AIで短い動画を作る方法が最も簡単です。 APIは複数の動画を自動生成したい場合や、既存の業務システムと連携したい場合に向いています。
ローカル実行では、生成ステップ数、解像度、乱数シードなどを細かく調整できます。 その代わり、大きなモデルファイルを保存する容量と、動画生成に耐えられるGPUやメインメモリが必要です。
APIの料金とローカル実行に必要な環境
MiniMax H3のAPIでは、動画の出力料金が生成秒数に応じて課金されます。 公式料金表から計算した、参考素材とH3-Context-IRの料金を含まない出力料金は次のとおりです。
| 長さ | 768P | 2K |
|---|---|---|
| 5秒 | 0.40ドル | 0.65ドル |
| 10秒 | 0.80ドル | 1.30ドル |
| 15秒 | 1.20ドル | 1.95ドル |
料金表では、768Pが1秒あたり0.08ドル、2Kが1秒あたり0.13ドルです。
入力料金は、参考音声が無料、参考画像が最初の5枚まで無料で6枚目以降は1枚あたり0.04ドルです。 参考動画は入力秒数に対して、768P出力では1秒あたり0.08ドル、2K出力では1秒あたり0.13ドルが加算されます。 複雑な指示や参考素材をH3用のプロンプトへ変換するH3-Context-IRは、100万トークンあたり入力0.90ドル、出力3.60ドルです。
768Pで生成済みの動画を2Kへ再生成する出力料金は、1秒あたり0.05ドルです。 ただし、再生成時には元の参考素材も再度課金されます。 再生成時の追加画像は6枚目以降が1枚あたり0.025ドル、元の参考動画は1秒あたり0.05ドルです。 そのため、参考素材を使う場合や2Kへ再生成する場合、表の金額だけが最終料金になるとは限りません。
ローカル実行はAPI料金が発生しませんが、無料で手軽に動くという意味ではありません。 ComfyUIの公式テンプレートが指定する量子化構成を配布リポジトリのファイル容量から計算すると、生成モデルが約20.97GB、テキストエンコーダーが約15.69GB、映像と音声のVAEが合計約5.81GBあります。 T2VまたはI2Vのどちらかを動かすためのモデルファイルだけで、保存容量は合計約42.47GBです。
R2VはT2VとI2Vとは別の生成モデルを使います。 3種類すべての公式ワークフローをローカルで使う場合は、共有できるテキストエンコーダーとVAEに2種類の生成モデルを加えるため、モデルファイルだけで合計約63.44GBです。 この数字にはComfyUI本体、Pythonの依存パッケージ、ダウンロード時の一時ファイル、生成した動画の保存容量を含みません。
これらはストレージ上のファイル容量であり、そのまま必要なGPUメモリ量を表す数字ではありません。 ComfyUIはモデルの一部をメインメモリへ移すオフロードを利用できますが、GPUメモリが少ないほど生成時間が延びる傾向があります。
量子化したComfyUI向けモデルとは別に、SGLangの公式検証では、公開版のBF16/FP32精度を保ったままレイヤー単位のオフロードを利用しています。 検証機は32GBのRTX 5090を2枚と377GiBのホストメモリを搭載し、1344×768、5秒、50ステップの生成に559.67秒かかりました。 計測されたGPUメモリ使用量のピークは、GPU1枚あたり26.3GiBです。 これは動作に必要な最小構成を示すものではありませんが、H3が一般的なノートパソコン向けの軽量モデルではないことは分かります。
「オープンウェイト」と「2K」の注意点
オープンウェイトとは、学習済みモデルの重みをダウンロードして実行や調整に利用できる公開形態です。 誰でも無条件に利用できるオープンソースと同じ意味ではなく、利用範囲は個別のライセンスで決まります。
完全なH3システムは、次の3つの部分から構成されています。
- H3-Context-IR:テキスト、画像、動画、音声の関係を解析し、生成用の詳しい指示へ変換します。
- H3-Base:指示と参考素材から、基本となる768Pの映像と音声を生成します。
- H3-Regenerate-2K:768Pの結果と元の参考素材を使い、2Kの動画を再生成します。
現在オープンウェイトとして公開されている中心部分はH3-Baseで、FL2VA用とRef2VA用の2種類のチェックポイントがあります。 H3-Context-IRは複数のホスト型モデルやサービスを利用するため公開版に含まれず、APIとして提供されています。 H3-Regenerate-2Kも現時点では公開されていません。
したがって、「H3のモデルをダウンロードすれば、公式サービスと同じ2K生成をすべてオフラインで再現できる」という理解は正確ではありません。 ローカル版の基本出力は短辺768ピクセルで、公式の2K出力には別の再生成処理が使われます。
この再生成は、完成した画像を機械的に引き伸ばす一般的な超解像処理とは異なります。 元の指示や参考素材をもう一度参照し、細かな文字や物体を含めて高解像度の動画を作り直す仕組みです。
モデルが本来利用するSparse Attentionも、最初の公開版には含まれていません。 公開版は通常のFull Attentionで推論し、Sparse Attentionの実装は今後公開するとモデルカードに記載されています。
現時点で確認できている弱点とライセンス条件
MiniMaxは公式発表の中で、H3に残っている課題を明記しています。
- 複雑なマルチモーダル情報の理解には改善の余地がある
- モデル規模の制約により、一部の能力は完成度を高める必要がある
- 一部の場面では、画面の細かさや精細度が不足する
これらは失敗する条件や発生率を示したものではありません。 どの程度の頻度で問題が起きるかは、自社で使う人物、商品、文字、会話、カメラワークを入力して確認する必要があります。
ローカル版の利用前には、MiniMax H3 Community Licenseも確認が必要です。 Apache LicenseやMIT Licenseとは異なる独自ライセンスで、地域と商用利用に条件があります。
- 通常ライセンスの対象地域から、米国、EU、英国、韓国が除外されている
- 日本は除外地域として記載されていない
- 通常ライセンスでは、H3本体、派生モデル、出力を除外地域で利用、複製、変更、配布、表示できない
- H3を使う商用製品やサービスの年間売上が2,000万ドルを超える場合、MiniMaxの事前許可が必要になる
- H3を使った商用製品の画面には「MiniMax H3」と表示する必要がある
- H3やその出力を、H3の派生モデル以外のAIモデル改善に利用できない
- 生成物を公開環境へ出す場合は、AIによる生成物だと明確に表示する必要がある
第三者がH3で生成できる製品やサービスを提供する場合は、利用者にも同等以上の利用制限を課し、違反を防止、通報、調査する仕組みを用意する義務もあります。
ここで挙げた条件は、H3 Community Licenseの一部です。 公開された重みを再配布する場合には、ライセンスの同梱やNOTICEファイルなど、別の条件も適用されます。 WebアプリやMiniMax公式APIを使う場合は、それぞれのサービス規約も確認する必要があります。 複数地域で提供するサービスや商用製品へ組み込む場合は、利用開始前に最新の規約を確認し、必要に応じて法務の専門家へ相談してください。
初めて試す段階では、Hailuo AIで5〜10秒の動画を作り、人物の一貫性、日本語の会話、効果音の同期を確認する方法が現実的です。 その結果を見てから、API連携やローカル環境の構築へ進むと、準備にかかる費用と時間を抑えられます。
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2026年7月8日